あまい

作詞/作曲:大森靖子

「この曲がアルバムの前半に来て、リズム・インするところがグッとくればすべてOKだね」と仮落としの時点で大森さんとぼくはこの曲の成功を確信していた。ギターのダビング中にtatsuが「この曲はシューゲイザーだったのか」とぽつり。ぼくも弾きながら心の中で「ああ、そういうことか」と猛烈に納得した。この果てしなさを伝える空気はアナログ録音でしかありえなかった。

大森靖子をするぞ!っていうバージョンじゃないほうの自分の曲。ベッドの上ですっぴんでゴロゴロして、みんなが嫌いなゲリラ豪雨にテンションあがって、浮かれちゃってる時は何もかも、パンツみえてることさえどうでもよくて、そう本当は絶望を通り過ぎた気持ちいいところでそのままボーッとしていたい。また新しい悦楽のためにハードなほうを選ぶなんて馬鹿げてる、このままずっとここにいたいよ、でも欲深いから、無理だ。その刹那さは、ライブと同じで、どんなにお客さんとぐちゃぐちゃになれても、終演時間がきてしまう。だからこの一曲の3分ちょっとに、できるだけ長い永遠を込める必要があった。直枝さんが心地よいノイズをのせてくれて、そうこれ!って思った。レコーディングした日の夜、「君が買ってきた魔法のダウニー」でギターが入るところを何回も聴いて、ずっと嬉しくて泣いてた。ゲリラ豪雨みたいなドラムも最高。今年は「今でしょ」っていう言葉が流行って、すごくいいなと思った、けど、そうじゃなくてもいい。大森靖子は完全に「今でしょ」タイプのガツガツした人間だけど、家とか、最寄駅をこえない範囲の近所での自分は「今を生きるなんてもうダサいでしょ」的な、おばあちゃんみたいにシワシワな顔で、省エネな生活をしていて、その自分も全然嫌いじゃないというか大森靖子やるために必要で。あまいってすごく気持ちいい。